寺日記

戒名のクーリングオフ

2009 年 05月 11日

昨日のことです。

先日、お父様を亡くされ、葬儀をした方が臨済宗妙心寺派のお寺を探していらっしゃいました。その方のお話です。

「4月末に父が亡くなりまして、葬儀をしなければならなくなりました。どこの葬儀屋さんに頼めばいいかもわからないところに、病院は遺体をすぐに運び出してくれと言います。そこで依頼することにしたのが、『家族葬』『NPO□□』をうたい文句にする葬儀屋さんでした。」

「お通夜もなしで、とにかく葬儀当日の朝、葬儀会場に行けば、一日で葬儀・火葬・初七日まで済ませることができるというのです。そうはいっても、お通夜である前の晩に線香の1本ぐらいあげてお参りはできるだろうと思っていました。そこで、前の晩に葬儀会場に行くと、一切入ることはできませんでした。」

「亡くなった父は、臨済宗妙心寺派にこだわっていて、その旨を葬儀屋さんに話しておきました。ところが、当日やってきたお坊さんは、サラリーマンをしながら兼業でお坊さんをやっている人で、お寺もどこにあるのかわからないような人でした。」お坊さんにもらったというお布施の領収書を見せていただきましたが、確かに住所も書いていない領収書でした。

「臨済宗妙心寺派にこだわっていた父のことを考えると、そのお坊さんに対する不信感が募るばかりでしたが、まずはお葬式をしてもらわなければというので、お葬式を終わらせました。でも、日が経つに連れ、あのお坊さんでよかったのだろうか、父は無事成仏するのだろうか、あんな坊さんにつけてもらった戒名でいいのだろうかと思うようになり、ホームページで妙心寺派のお寺を探して、ご相談にお伺いしました。」

というのです。

最近よくある葬儀屋さん紹介の偽坊主サギです。おそらくその葬儀屋さんは、紹介料名目でお布施の何割かをピンはねしているのでしょう。でも、偽坊主といっても、喪主の方が納得すれば、そのお坊さんもニセとは言い切れないところがあります。なにしろ、僧侶の資格は本山が認め、住職の辞令を出すだけで、国家試験でも何でもありませんから・・・。

「四十九日からこちらのお寺でお世話になることはできませんでしょうか、それと『戒名』もつけなおしてもらえませんでしょうか。」

というので、はじめて「戒名のクーリングオフ」を経験することになりました。

5月11日

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