圓福寺日記

心やさしき暴走族

2021 年 01月 25日

 お葬式を終えて火葬場に向かう道中、幹線道路に出るところで車が渋滞中でした。

 私の前を行く霊柩車が入ろうとする渋滞の列に、一台の暴走族らしきバイクが止まっています。

 どうやら信号待ちの渋滞らしく、そもそも信号待ちをする交通法規に従った暴走族でしたが、時折アクセルをふかしてボロロボロロとマフラー音を響かせています。

 信号が変わって渋滞の車列が動き出しても霊柩車は入れてもらえないだろうなと思っていました。

 信号が変わったらしく暴走族の前の車が動き出しました。

 すると、暴走族のバイクは止まったままです。どうやら霊柩車に道を譲っているようでした。霊柩車につづく私の車までは道を譲ってはくれませんでしたが、なんとも心優しい暴走族でした。

 もしかしたら彼も身内のお葬式に参列したことがあるのか、あるいは霊柩車に乗っている死者への尊厳をご家庭でご両親やお年寄りから教えられたという家庭教育を受けているのか、きっと暴走族を卒業したら立派な大人になるのだろうなと思いました。

 市原別院近くの小さな集落にも、改造バイクに乗った暴走族らしき少年がいます。「走り」に出かけるところに出くわしたことがありますが、集落を出るまではアクセル音も静かにブルルルと走っていき、幹線道路に出たとたんにパララパララと走っていきます。子どものころから集落の人からかわいがってもらっていたという社会の教育が、彼には根付いているのだと思います。彼もまた暴走族を卒業したら、あるいは卒業しなくても、地域の行事などで中核を担う青年になっていくのだろうと思います。

 霊柩車に置いてけぼりにされましたが、無事火葬場で荼毘のお参りをして帰山いたしました。

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